みんなで楽しもう卓球バレー

 重度の知的障がいを伴う自閉症の長男、壮一朗さん(13)は今はまだ社会参加が難しい。でも、成長して地域とつながれるその日には、彼を受け入れてくれる所がたくさんあって欲しい。向仁子さん(47)は、障がい者が地域にいることが当たり前の社会、そんな社会を目指して「卓球バレー」の普及を進めているのだという。障がいがある人、ない人、違う種類の障がいを持つ人、軽い人も重い人も、一緒に協力して楽しめるのが「卓球バレー」であり、手軽に取り組めて誰でも簡単にプレーできるのに、結構熱くなるスポーツなのだとか。

—実は「卓球バレー」を初めて耳にしたのですが

向 茨城ではまだ日が浅いんです。協会設立も約1年前ですから。でも、競技自体は40年以上前に日本で生まれ、競技人口は全国で2、3万人。海外でも南米、東南アジアを中心に広がっています。
 19年開催の「茨城国体」と共催の「全国障害者スポーツ大会」にも採用されました。地元での50年に1度の祭典なので、出場枠の制限がないオープン競技として多くの人に参加を呼び掛けるつもりです。スポーツをやる機会の少ない障がい者も、この機会に挑戦し、社会参加のきっかけになればいいなと。

—県内の競技人口はどれくらい?

向 1000人、いや、500人ぐらいかな。認知度を上げていこうと、協会では年間70回ぐらい支援学校で出前授業を行ったり、福祉イベントや福祉施設で体験会を開いたりしてきました。初めての方がほとんどなので最初はおっかなびっくりですが、慣れてくると、歓声や奇声も上がって大喜びです。道具もネットとラケット12本、ボール6個がセットで1万円と安く、大会での競技時は別として、普段はテーブルでも楽しめます。

—活動のきっかけは、障がいがある長男・壮一朗さんの存在だった

向 彼は運動が得意だったので、そこを伸ばそうと受け入れてくれるスポーツ団体を探しましたが、見つかりませんでした。それで私が障害者スポーツ指導員の資格を取り、スポーツボランティアを始め、最初は息子を連れて行っていました。
 でも、彼にとって、たくさんの人の中で何かやるのは、楽しみよりもつらさが勝ってしまうと分かりました。但し、それはあくまで今の段階。将来、みんなと一緒に何かを成す事に楽しみや達成感を得られる時が来ると信じ、その時に息子を温かく受け入れてくれる人、居場所を増やしていきたいと思い活動しています。

—障がい者はかわいそうという世間の目が依然としてあり、一方で障がいは個性だという見方もあります

向 障がいのある子を育てていくこと、生活していくことはとても大変です。でも、不幸と思ったことはないです。ふっと何かができたとき、意思の疎通が図れたとき、ものすごくうれしい。私の行動力は、息子を産んだから得られたものです。
 障がい者を一緒くたにしてしまわず、一人ひとりの違いを知って欲しいとも思います。個性というレベルでは語れない、親でも理解してあげられない感覚の生きにくさがある子もいます。「そういう子もいるんだよ」ということをちょっとでも分かってもらえば、生きにくさも緩和されると思うのです。

 同協会では、支援者、支援金を募っている。詳しくはTEL.0294(23)1621 向さんへ。
聞き手 フリーライター・花島実枝子

※卓球バレー:卓球台を使い、1チーム6人が椅子に座って盲人卓球用のボールを木製のラケットで転がし、相手コートへネットの下を通して3打以内で返す団体競技。ルールは6人制バレーボールを元にしている